青蓮亭日記

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2009年 02月 02日

戦前の家庭科の教科書

アールヌーヴォー風のデザインに
『中等教育 家事新教科書 上巻』と記された、A5版よりやや大きい本。
1932年(昭和7年)に
東京・日本橋の「至誠堂」という出版社から発行された家庭科の教科書だ。

「高等女学校、実科高等女学校、師範学校教授要目により
中等教育諸学校の家事教科書として編纂された」とある。

編者は、奈良女子高等師範学校内の「佐保會」という団体。
春の女神「佐保姫」からの命名だろう。

(御売約)

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「緒論」には以下のような文が。
少々長いが時代の雰囲気が伝わってくるので転載してみる。

「家庭」
人は、家庭の一員として家族と共に共同生活を営んで互に相依り、
相助け、相睦んで苦楽を共にする。
教育勅語に「爾臣民父母に孝に兄弟に友に夫婦相和し」と仰せられたのは、
實に家庭の理想で、又一般家庭の有様でもある。
外部の活動のために疲れた心身を醫し、更に勇しく立ち得るのも、家族愛の力である。
家庭は、實に心身の慰安所・修養所・活動の準備所で、
又その原動力を生ずる所である。
各人が健全な、平和な家庭を有することは、人生の最大の幸福であらう。

……とあり、そのために「主婦は家事の要領を習得し、生活の向上を計り、
たとえ職業や社会活動のために家族で家事の分担をする場合でも、
家事全般を総括し責任を持つべし」……と説いている。

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【第一篇 衣服】
第一章 衣服の使命/第二章 衣服の材料/第三章 衣服地の選定/
第四章 衣類の始末/第五章 汚點抜きと洗濯/第六章 染色・色揚
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【第二篇 食物】
第一章 食物の使命/第二章 栄養素/第三章 食品の価値/第四章 食量/
第五章 日常食品/第六章 調味品/第七章 嗜好食品/第八章 食品の保存/
第九章 献立/第十章 調理法/第十一章 燃料

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「東京市魚市場集散重要魚介美味季節表」。
横に長くて全部スキャンできなかったけど、これは今でも役に立つ。

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最新の調理器具。

【第三篇 住居】
第一章 住居の使命/第二章 住居の改良/第三章 住居の選び方/
第四章 住宅建築の計画/第五章 家屋建築の順序/
第六章 主要各室の設備/第七章 屋外設備/
第八章 住宅の保存及び器具の手入/第九章 災害/第十章 転宅

この章立てにある通り、建築・土木などに関してかなり専門的な内容が載っている。

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最新の台所。

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最新の暖房装置。

附録は「各種食品中のヴイタミン含有量比較表」と「食品分析表」。
下巻は「養老」「看護」「育児」「一家の管理」といった内容になっているようだ。

レトロな内容を楽しみつつ、
「家事=ハウスキーピング」というのは、
さまざまな知識や経験が要求されるかなり高度な仕事なんだよなぁと、
改めて考えさせられる本。

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巻末に「四年 櫻(組) 渡辺富美子」と名前が書いてあった。
この教科書には大正生まれの「富美子さん」の几帳面な書き込みがたくさんあり、
真面目に勉強していた様子がうかがわれる。
「富美子さん」はその後どのような人生を歩んだのだろうか……?

by penelope33 | 2009-02-02 22:20 | 古いもの・古びたもの | Comments(6)
Commented by sa55t at 2009-02-02 23:00
さすがに知らない器具が多いですね。
大正時代ですものね、当たり前か。
しかし情報一元化してなかった、もしくは貧富の差が歴然とあった大正時代は、あの器具を知らずに生活していた人が多かったでしょうね。
Commented by penelope33 at 2009-02-02 23:56
そうですね〜。
「メタンガス発生装置」が設置された家なんて、いったいどれだけあったんでしょう???
Commented by ぷち at 2009-02-03 06:52 x
わ〜!面白い。これ。
父の兄弟の教科書、少し残ってますけど、伯母たちのはあったかな?
でも、その時代より古いですね。興味ありです。
奈良に行くと佐保川、佐保小学校、佐保〜を見つけては喜んでいる佐保好きな(?)我が家です。
もう何年も行っていませんが。
梅やさざんか、バラや牡丹にも佐保姫っていう品種があるんですよね〜。植えようかと思った。
Commented by penelope33 at 2009-02-03 07:48
「佐保」って平城京の時代からの地名なんですね〜。
今回、初めて知りました。
内容、おもしろいですよ。近々お見せしますね。
Commented by take at 2009-02-04 08:46 x
後の国立奈良女子大学ですね。もう八十になる叔母がここの出身で神戸で通訳してたりで、子供心にリスペクトでした。
Commented by penelope33 at 2009-02-04 17:02
そうですね。
私は普通大学、特に関西の大学のことに疎いので、
大学の同級生に奈良女子大付属高出身の人がいて、
「おお、奈良に国立の女子大があるんだな〜」と思ったのを覚えています。
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