2010年 02月 24日
こちらで19世紀オランダのスリップウェア皿を御紹介しているが、 これは島根県の「布志名焼(ふじなやき)」、日本のスリップウェア皿である。 (昭和中期頃?/約19cm×16.4cm・高さ:約3.7cm/御売約) 1913(大正2)年、柳宗悦と富本憲吉は、 『クェント・オールド・イングリッシュ・ポッタリー(Quaint Old English Pottery)』 (1909年刊)という本に出会い、 その中でも特に、抽象文様や線文様が自由闊達に描かれた日常雑器に感銘を受ける。 そして、当時来日しており彼等と交流の深かった イギリスの陶芸家バーナード・リーチ(Bernard Howell Leach/1887-1979)は、 それまで全く知らなかった自国のやきものの素晴らしさを、 異国の地で日本人の友から教わることになる。 リーチはこの本から多くのことを学び、自らの作品に昇華させていった。 詳細は、「スリップウェア研究会(Japan slipware society)」監修による、 こちらのページを御覧ください。 一方、布志名焼は、江戸時代に松江藩の御用窯(雲善窯)として開窯。 後に民窯の「船木窯」も開かれ、黄釉や出雲青地と呼ばれる青釉の日用雑器を焼き、 海外に輸出されるほど繁栄しながらも、やがて衰退。 戦後リーチは、島根の玉造温泉に滞在し、毎日駅前の「湯町窯」に通い、 窯元の福間貴士を助手にして展覧会用の作品づくりに勤しんだ。 ところがその玉造でチフスが流行。 布志名の船木道忠がリーチを自宅に連れ帰り、仕事を続けさせたという。 そのため、福間貴士も船木道忠もリーチの技術を学ぶこととなり、 福間はリーチ風の民窯に切り替え、 船木はリーチの「ガレナ釉」(鉛の硫化物の黄釉)を用い作家への道を歩み、 その技術を長男の健児に伝えた。 当時、近隣には「丸三陶器」という民窯があったが、 この丸三は両者のやきものの後を追い、リーチ風の窯に変わったとか。 この品を御覧になったコレクターの方は、 「この赤い土は『湯町』のほうじゃないか?」とおっしゃっていた(→その通りでした *)。 現在では、丹波や益子など、布志名以外にもスリップウェアの技法を用いる作家がおり、 現代の日本では食器に鉛を使用することは禁じられているので、 苦心の末、灰釉などを使われているようだ。 **************************** いろいろと立て込んでおりますため、 しばらくブログの更新をお休みさせていただきます。
by penelope33
| 2010-02-24 21:00
| クラフト・デザイン
|
Comments(6)
Commented
by
au_petit_bonheur at 2010-02-23 18:48
いい感じですね。
子供の頃、父の趣味で布志名焼の窯元に行ったことがあります。 待っている間に、そこで飼われていた山羊のミルクを 飲ませてもらったらおいしかったのが忘れられず。
0
Commented
by
penelope33 at 2010-02-23 19:06
Commented
by
St Ives
at 2010-02-23 23:28
x
なにしろコンウール地方はロンドンから遠いので、まだ行けていなのですが、セントアイビスのリーチのスタジオをぜひ訪れたいと、、、、、。
Commented
by
penelope33 at 2010-02-24 03:13
お仕事で北に行かれることは結構あったのではないかと思いますが、
コーンウォール地方には御縁がなかったんですね。 St Ives、Wikipeiaを読んで、 テートギャラリーの分館もあるんだと初めて知りました。 ここはちょっと行ってみたい気がしますね (と言いつつ、実際は出不精なんですが……)。 コーンウォールって、個人的には、エイフェックス・ツインこと、 リチャード・D・ジェイムズの育った場所(今も住んでるのかな?) というイメージが強かったです(笑)。
Commented
by
Take
at 2010-02-24 16:40
x
Commented
by
penelope33 at 2010-02-24 16:52
|
アバウト
古道具屋「ロータス・ブルー(青蓮亭)」店主のつれづれ。家族は映像ディレクターの相方ZOO(2021年9月13日、横行結腸がん+肝転移により58歳で逝去)とキジトラ猫のヤマコ(♀/2022年9月23日、16歳で他界)。ブログ主は、膠原病類縁疾患の『シェーグレン症候群』のため療養中です。 by 青蓮亭 カレンダー
*「ウチのもの・ウチのこと」
「つれづれ」「観る・聴く・読む」 以外のカテゴリで御紹介している 古いものは「商品」です。 *古い記事についてのコメントも 大歓迎です。 また、価格のお問い合わせなど、 どんな些細なことでも、 また何度でも、 どうぞ御遠慮なくお尋ねください。 *E-MAIL はこちらへ (メインのアドレスを G-mailアドレスに変更しました)。 古美術・骨董 アンティーク・レトロ雑貨 ブログ・ランキングに 参加しております。 上の「古美術・骨董」 「アンティーク・レトロ雑貨」 という文字を クリックしていただきますと、 それぞれポイントが加算されます。 お気が向かれましたら、 よろしくお願いいたします。 カテゴリ
全体 初めて御覧になる方へ LE LOTUS BLEU の由来 価格について 古いもの・古びたもの レトロ・ポップ クラフト・デザイン 大江戸骨董市 西荻骨董好きまつり ドーの古道具市 点店 ルーサイト ギャラリーの骨董市 二子ノミの市 イベント出店 書籍『野菜のポタージュ』 書籍『野菜のスープ』 お知らせ つれづれ ウチのもの ZOOの夢日記 観る・聴く・読む タグ
器(541)
骨董(467) 古道具(405) ヤマコ(328) 住まい(283) 骨董市(248) カルチャー&サブカルチャー(210) 民藝(189) 食べる・のむ(177) 木工・天然素材(134) 白いやきもの(127) 金属・金工(122) ヴィンテージ(79) 家族・思い出(76) ガラス(71) 小さきもの(65) 身につける(52) カメラ・時計(41) 琺瑯(35) 紙もの(26) 染付(11) 印判(11) ブログジャンル
検索
最新のコメント
ブログパーツ
記事ランキング
画像一覧
最新の記事
以前の記事
2023年 04月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 08月 2020年 08月 2020年 06月 2020年 05月 2019年 07月 2018年 11月 2018年 07月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 04月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 ライフログ
ファン
|
ファン申請 |
||