2007年 11月 13日

ディゴワン・サルグミンヌ窯の水差し

古色のすばらしいフランス製の白い水差し。
底に「DIGOIN & SARREGUEMINES」の刻印がある(売約済)。

この「ディゴワン&サルグミンヌ窯」は、フランスの代表的な陶器メーカーのひとつで、
その歴史は18世紀末に遡る。

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1784年(1790年とも言われる)、
フランス北東部・プロイセン(ドイツ)との国境のアルザス・ロレーヌ地方
サルグミンヌに、同名の窯が開かれた。

私の世代で“アルザス・ロレーヌ地方”といって思い出すのは『最後の授業』
(原題は『La Dernière Classe』)。
1873年に出版されたアルフォンス・ドーデ(Alphonse Daudet)の
短編小説『月曜物語』(Les Contes du Lundi)の一編である。
愛国心をうたった物語として日本の教科書で取り上げられたこの小説、
現在ではこんな読みかたが常識となっているようだ。

閑話休題。
当初サルグミンヌ窯ではきめの粗い生成り色の陶器がつくられていたが、
次第に技術が向上し、きめ細やかな白い肌の陶器が生産できるようになり、
19世紀半ばにはナポレオン3世の庇護を受けて大いに繁栄した。

しかし1870〜71年の普仏戦争の結果、
サルグミンヌの地はプロイセン領となり、
陶器の販売も、それまではフランス国内での流通であったものが、
プロイセンからフランスへの“輸出”ということになり、重税が課せられるようになった。 
そこでサルグミンヌ窯はフランス内地で別途の窯を持つことを企てた。

1876年、フランス中部ローヌ地方のディゴワンに開窯した「ディゴワン(Digoin)窯」は、
多種多様の陶器を手がける小さな窯が集合したもので、
大都市に近く交通の便もよかった。

*2つの窯の位置関係はこちらの地図で見られる。

そこで1879年にサルグミンヌ窯はディゴワンに移り、ディゴワン窯を吸収。
サルグミンヌから多くの技術者をディゴワンに呼び寄せた。
このディゴワン&サルグミンヌ窯は1970年代末まで続き、
年代によってさまざまな刻印があるが、
このピッチャーはおそらく1940〜50年代頃のもの。

底の縁が黒くなっているのは、直接ストーブの上に置いた痕だろうか。
ふと、昨年約20年ぶりに再見した『ラルジャン』('83/監督:ロベール・ブレッソン)で、
つつましやかな初老の女性が、コーヒーを入れた大きな陶器のポットを
鍋の湯で湯煎していたのを思い出した。
過ぎ去った歳月が刻まれた何の装飾もない白い水差しと、
職業俳優ではないその女性の毅然としたたたずまいが、どことなく重なる。

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by penelope33 | 2007-11-13 19:14 | 古いもの・古びたもの | Comments(0)


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