青蓮亭日記

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2008年 02月 20日

白い琺瑯のやかん

この日記に書いた通り、
とある好事家から白い琺瑯のやかんを探してほしいと頼まれていた。
紺や黒のリムのない白い琺瑯製品自体なかなかないのに、
やかんなんて見つけられるだろうかと思いながら、いつも頭の片隅においていた。

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それが、ひょんなことでこの品と出くわした。
タイで見つけた'70年代・イギリス製のデッドストックだという
(イギリスのメーカーのタイ工場で生産されたものかも)。
小振りなサイズ、素直なフォルム。
蓋のツマミまで琺瑯製というのもいい。
細いコイル状のスチールの持ち手には白い樹脂系のカバーが巻かれている。
樹脂系のカバー、つまり “ビニール” が使われている点で好みが分かれそうだが、
白く細い持ち手の描く弧はなかなか美しいと思う。

(底径:15cm・蓋までの高さ:13cm・持ち手を上げたときの高さ:20cm)

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件の方に画像をお見せしたところ、とりあえずお気に召したようだ。
大変ディテールに厳しい方なので、
現物を御覧いただくまでは本当にお気に召すかどうかわからないけれど、
今のところ「秦さんが生きていらしたら喜びそうな」とのお褒めの言葉をいただいている。

白い琺瑯のやかん_f0151592_1950247.jpg


白洲正子さんに関する本をお読みの方などは御存知かと思いますが、
「秦さん」とは随筆家の秦秀雄(1898-1980)のこと。

私自身は怠慢なことに彼の著作は『見捨てがたきもの —身辺の雑記—』
('71年/文化出版局 刊)しか手元に持っていないのだが、
この本や『古伊万里図鑑』('71年/大門出版美術出版部 刊)の図版などを見るにつけ、
その選択眼にとてもシンパシィを感じる。

誰もが青山二郎や白洲正子のような高価な骨董品を買えるわけではない。
身の丈に合った金額で、座辺の品を少しでも美しいもの、
“正しいもの”(これは例えば「鉄瓶だったらこの形でしょう」といったこと)にしようと思うとき、
指針となる根源的なものの見かたは秦秀雄に学べばいい。
著作を1冊しか読んでいないくせに、そんな気がしている。

森繁久彌が「珍品堂」役を演じた東宝映画
『珍品堂主人』('60/監督:豊田四郎)を名画座で観たことがある。
赤く退色した古いプリントで、
どうしてこんなにおもしろい映画がニュープリント・DVD化されないのか不思議だった。
遺族や関係者の許諾が得られないのだろうか……?

この作品を今リメイクしたら……と、いっときZOOと話して盛り上がったのだけど、
「美男ではなく、それでいて華のあるおじさん」の主演俳優がどうしても思い浮かばず、
あえなく頓挫した。


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さて、このブログをお読みいただいている方には、
私の扱う品のレベル(レベルが高い低いというのではなく、価格帯)や嗜好などが
なんとなくおわかりいただけることと思います。

決してオールマイティなタイプではありませんが、
もし「自分と好みが似ているかも」と思われた場合は、
「こんなものを探している」とお気軽に声をかけてみてください。
リクエストにお応えできる保証は全くありませんが、
頭の引き出しに宿題として残しておきます。

その際は、私自身が納得できるものを選ぶと思いますから、
もしそれがお客様のお気に召さなくても、
無理に押しつけるようなことはいたしませんので。

by penelope33 | 2008-02-20 20:08 | レトロ・ポップ | Comments(8)
Commented by Awavi。 at 2008-02-20 22:20 x
骨董市、出店お疲れさまでした。
僕は寒風にめげて出かけられず・・来月はぜひ。
ところで、この琺瑯のヤカン良いですね〜僕も好きです。
ご依頼の方もきっと気に入ると思います。
ペネロープさんのセレクト品。
完全に骨董屋でもなく、雑貨屋でもなく、
オランダやイギリスのモノと、
朝鮮や日本のモノが混在してるのが魅力です。
ベトナムモノは置いてないのに、なぜかベトナムの匂いがします!笑
Commented by penelope33 at 2008-02-20 22:53
Awavi。さん、ありがとうございます。
17日は寒かったからお出かけしないで正解だったかも。

ベトナムにはいつか行ってみたいですね。
アジアの文化と旧宗主国のフランスっぽいテイストが混じり合った
モノたちが魅力的です。
私のセレクトは “旧植民地テイスト”なのか!?
Commented by びっき☆ at 2008-02-21 22:56 x
無知でごめんなさい。
前から思っていたのですが、琺瑯のリムには何か意味がるのでしょうか?
単なるアクセントなのでしょうか?
リムのない真っ白なヤカンって綺麗ですね。
こういうのが似合うキッチンに憧れます。
Commented by penelope33 at 2008-02-21 23:54
そうですね。真っ白いとやっぱりスッキリして見えますね。

私もたぶんこういう理由なんじゃないかとしか言えないのですが……。
切りっぱなしの琺瑯って断面が錆びやすいと思うんです。
それに上の3番目の画像にあるように、
真っ白なこのヤカンは蓋の縁の欠けが目立ちますよね。
濃い色の分厚いリムは、錆び止めや補強が目的なんじゃないでしょうかねー。
Commented by いしころ at 2008-02-22 21:19 x
細い持ち手が華奢で素敵ですね。
ティーポットのような。
やかんは我が家では使わないのですが
きれいだな、と思うものって(好みに合うもの)
観ているのも気持ちがよいものですね
Commented by penelope33 at 2008-02-22 22:34
一見、「熱湯がいっぱい入ったとき、大丈夫かな?」という華奢な持ち手なんですが、
案外細くても強靭なのかもしれません。

私も今使っているヤカンがダメになったら自分ではもういらないかなとも思うのですが、
相方がペーパードリップでコーヒーを入れるのにやっぱり欲しがるかな……?
きれいだなと思うもの、好きなものが一番あるところ、
それが私の場合、
しまう場所がなくて道具類が何でも出しっぱなしの台所なのかもしれません。
料理好きというわけでもないのに(笑)。
Commented by N.Kojima at 2008-02-24 00:49 x
ステンレスのやかんですと、使ってゆくと底に、何かが付着しますけど
ホーローだとそれがないですよね〜
Commented by penelope33 at 2008-02-24 00:56
水垢とか塩素でしょうか……?
あの表面のガラス質がなかなか優れもののようですね。
最近、野田琺瑯の保存容器で滅菌効果も実感しました。
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