青蓮亭日記

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2008年 06月 26日

黄金色のセルロイド

朽ちかけたセルロイドの容器。
おそらく七味唐辛子を入れていたものだと思うが、
容器自体が七味唐辛子色……、いや、黄金色に変色し、無数のひびが入り、
有機物が内側から光を放ちながら粉々に壊れていく瞬間を封じ込めたような、
不思議な存在感がある。

(御売約)

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この小さな物体を見ていて思い出したのが、
ラッセル・ミルズ(Russel Mills/1952〜)というイギリスのアーティストの
『Lumen Field』(1989)という、'90年にPARCOギャラリー(東京・渋谷)で開かれた
展覧会のメイン・ビジュアルにもなった作品。

作家自身のサイトに'80年代のペインティング作品が掲載されていないので、
しばらく画像をUPしておきます)

黄金色のセルロイド_f0151592_23405462.jpg


ミルズは、若き日の大竹伸朗やニューウェイヴ・バンドのWIREのメンバーと
"DOME"というアート・プロジェクトを組んだり、
ブライアン・イーノ、デヴィッド・シルヴィアンなどの
レコード/CDのカヴァー・デザイン(←ページ右側の「COVER DESIGN」という項目をクリック)
を手がけるなど、'80年代を象徴するアーティストのひとり。
'90年代には、ナイン・インチ・ネイルズの作品を多く手がけている。
この作品もアルヴォ・ペルトの作品に寄せたものだという。

'80年代のペインティング作品は、このページで見られる。

さて、セルロイド(celluloid)という素材そのものに話を戻すと、
1856年にイギリスで最初につくられた、
歴史上最も古い合成樹脂(熱可塑性樹脂)なのだという。

おもちゃやメガネのフレームなどの他、1880年代後半からは、
従来の写真乾板に代わって写真フィルムとして使用されるようになった。
1895年に誕生した映画フィルムもしかり。

セルロイド製の初期の映画フィルム=可燃性フィルム(Nitrate film)は極めて燃えやすく、
劣化が進むと最終的には粉化してしまうので、近年その保存方法が問題になっている。
可燃性フィルムと不燃性フィルム(Safty film)の違いについては、
このページに端的にまとめられているので、御興味をお持ちの方はお目通しください。

'84年に京橋の旧フィルムセンターが可燃性フィルムの自然発火により火災になった際、
私は、大ホールで『いとこ同志』('59/監督:クロード・シャブロル)の上映開始のブザーの
代わりに非常ベルの音を聞いて避難した観客のうちのひとりだった。

後年、戦前から続く記録映画の製作会社で、
可燃性フィルムを不燃性のものに写し変える作業の発注を始め、
古い自社の映像を整理し、ビデオに変換して簡単に観られるようにしたり、
フィルムセンターを始めとする全国の博物館や図書館などに複製物を納めたり、
テレビ局やテレビ制作会社に
ニュース映像などの一部分(=フッテージ footage)を貸し出したりといった
フィルム・アーカイヴの仕事」をすることになろうとは……。

私の経歴は1枚の履歴書に収まらないような雑多で奇異なものだが、
後になって振り返ってみると、
突飛とも思える点と点を結ぶ何かしら細い線が見えてくるような気がする。

by penelope33 | 2008-06-26 23:44 | 古いもの・古びたもの | Comments(0)
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