青蓮亭日記

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2008年 10月 25日

Matt Mahurinのこと

眠い。毎日たっぷり眠っているのだけど眠くてしょうがない。
もともとヤワな自律神経系が季節の変わり目に変調するせいらしい……。

昨日のパラジャーノフの絢爛たる夢の世界に対して、
今日は、遠い記憶、ほの暗い夢……それもたいていは悪夢のようなヴィジョンを描き出す
写真家・イラストレーター・映像ディレクターのマット・マハリン(Matt Mahurin)のことを。

下の画像は、右のライフログにも挙げている
1989年に刊行された彼の最初の作品集『PHOTOGRAPHS』 の表紙。

Matt Mahurinのこと_f0151592_20434686.jpg



1959年カリフォルニア生まれ。
20代半ばでまずイラストレーターとして、
「タイム」「ローリング・ストーン」「ニューヨーク・タイムズ」といったメジャー誌で、
家庭内暴力、幼児虐待といったヘヴィな社会問題をテーマとした作品を発表し、大きな反響を呼ぶ。

その後、テキサス刑務所の囚人たちを撮った連作で写真家としての評価を確立。
やがてミュージック・ビデオの世界でもその才能を発揮し、
Peter Gabriel、U2、Sting、Tracy Chapman、R.E.M.、
Joni Mitchel、Metallicaなどのクリップのディレクションを手掛ける。

例えて言えば、ドイツ表現主義映画を撮っていたキャメラマンが
報道写真家集団「マグナム・フォト」に参加したような、
非常に特異な個性を持つフォトグラファーで、
そしてその作家性を保ちながらMTVの世界でも成功した希有な人である。

今日改めてWikipediaに載っていたミュージック・ビデオをYouTubeで拾ってみると、
Metallica "The Unforgiven" ('91) あたりが代表作なのかなという気がしたけれど、
なんだか展開がいまひとつだし、
比較的近作になる Tom Waits "Hold On" ('99) などは編集がつまらない。

個人的には、初期の Tracy Chapman "Fast Car" ('88)
R.E.M "Orange Crush" ('88)(リンク先のページ右手、上から2段目・右から2つ目をクリック)などの
シンプルな作品のほうが印象深い。

マット・マハリンと同様に、写真家としても映像ディレクターとしても成功した
アーティストとして思い出されるアントン・コービンのほうが、
もしかしたら映像作家としては優れているのかもしれないけれど、
写真家としては、マット・マハリンのダークでおぼろげな悪夢のような
(=obsessiveな)世界により惹かれる。

WEB上ではこちらのページで9点の作品が見られる。
でも、これだけでは彼の世界観がどうも伝わらないような気がするので、
マズイとは思いながらも『PHOTOGRAPHS』('89)から4点だけ複写した。
(写真集はどれも絶版で結構な価格になっているので、大目に見てください……)。

Matt Mahurinのこと_f0151592_20474319.jpg

(Texas Prison 1985)

Matt Mahurinのこと_f0151592_2047565.jpg

(New York City 1987)

上の2作品は、1990年の『LIFE』特別号
『The World's Best Photograghers 1890-1990』の121点の中に掲載されている
(確か2点選ばれているのは彼ひとりだったと思う)。

Matt Mahurinのこと_f0151592_204899.jpg

(Texas Prison 1985)

Matt Mahurinのこと_f0151592_204821100.jpg

(New York 1987)

……クライ・コワイ・キケンな世界?
1990年にPARCO GALLERY(東京・渋谷)の初個展のために来日した際に、
(いまのところ)生涯で最初で最後のファンレターを書いて手渡した思い出が。

ちなみに彼は今でもイラストレーターとして、
不気味でときに悪趣味ともいえる絵を描いている一方で、
子どものための絵本も2冊手がけている。

by penelope33 | 2008-10-25 20:57 | 観る・聴く・読む | Comments(0)
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