青蓮亭日記

seirentei.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2009年 06月 02日

RCサクセション『COVERS』

忌野清志郎さんが亡くなってから、
ZOOが i-Tunes の自作 “ジュークボックス”(レコードジャケットの画像入り)で
よくRCサクセションタイマーズの曲をかけている。

彼は特にRCの熱心なリスナーではなかったけれど、
清志郎さんの運転手兼付き人として音楽業界に入った三宅伸治さん
(後にタイマーズなどにも参加)のバンド「MOJO CLUB」のビデオクリップや、
'90年の東芝EMI(現 EMIミュージック・ジャパン)企画・主催のイベント
『ロックの生まれた日』のビデオソフトのディレクション、
タイマーズのライヴ撮影などを担当したことがある。

タイマーズのライヴのときは、
清志郎さんのパフォーマンスに圧倒され、夢中でカメラを回したそうだ。

私が清志郎さんとRCサクセションのカッコよさを遅まきながら実感したのは、
'88年に原発問題で東芝EMIからの発売が中止になったアルバム『COVERS』を聴いたときのこと。


Memory of the Japanese greatest rock singer Kiyoshiro Imawano(1951-2009)ex-RC Succesion

I was involved in the extremely controversial album ‘Covers’(1988)of RC Succesion
because of anti-nuclear, anti-war, terrorism etc., as the coordinator of sleeve printing.
It was so urgent and tough experience, and developed me so much.

When I was a high school girl, I didn't like Kiyoshiro's style very well.
The older I get, the deeper understanding his song and attitude to life and society.


f0151592_294421.jpg



私が高校生の頃にRCがブレイクし、同級生に騒いでいる子もいたけれど、
なんといっても “NEW WAVE少女” だったから、
モロにストーンズ・スタイルのロックンロールという気がしてあまり興味を惹かれなかった。
ライヴ中の「愛し合ってるか〜い」というオーディエンスへの呼びかけも、
なんだか生ぬるい馴れ合いのようで、かすかに嫌悪さえしていた。

でも、それは間違いで、清志郎さんは徹頭徹尾パンクな人だったのである。

高校時代、英語教師から「君の発音はどうしてそんなに素晴らしいの?」と尋ねられ、
「ビートルズのレコードを擦り切れるまで聴いたからです」と答えた「栗原清志」少年は、
ビートルズと同じ位のめりこんだR&Bをシンプルに消化する術を、
後年ローリング・ストーンズに学んで意識的に取り入れた。

そのストーンズも、実際にはビートルズのファンであったのに、
「ライバルの不良バンド」というキャラクターを意図的に演じていたという。

私の「食わず嫌い」の印象が覆ったのが、月並だけれど、
'82年の坂本龍一とのコラボレーション・シングル『い・け・な・いルージュマジック』だった。
ルックスとともに圧倒的な存在感を放つヴォーカル。

清志郎さんは、年齢を重ねるごとにどんどんカッコよくなっていった。
いや、私が清志郎さんのカッコよさがわかるまでに時間がかかっただけなのか……。

今回の清志郎さんについての報道の中で、
大抵「インディーズのレコード会社から発売された」と書かれている
『COVERS』を発売したのは、
RCが以前所属したことのあったキティレコードというレコード会社
(現在はユニバーサルミュージックに統合)。
弱小ではあるけれど “インディーズ” とは言い難い会社である。

大学を出た後に私が入社したのがこのキティレコードだった
(このときの上司が実は「Yutori-tei」のMrs.Tさん)。

雑誌『SPA』から「今週のタナボタ」と揶揄されたりもした、この『COVERS』発売騒動。
その裏で、発売日まで通常では考えられないスケジュールで、
東芝EMIの担当者からつくりかけの版下(=印刷原稿)を引き継ぎ、
CD・LP・カセットテープのジャケットと特典用ポスターの制作進行の担当になった。

レコード会社では、音楽制作の遅れで発売日が遅れることはあっても、
商品化の最終行程であるジャケット制作の遅れで発売日が遅れることはまず許されない。

Hという事務所のエグゼクティヴ・プロデューサーの文字校正にポロポロと見落としがあり、
その度印刷会社に詫びを入れて直した(まあこれはいつものことだったが)。

“特急進行” のためか、製版技術のせいか、印刷用紙のせいか、
おおくぼひさこさん撮影の写真の印刷の上がりが思わしくなく、
色校(=試し刷り)を当時の販売会社のポリドールのデザイン室で広げながら
仁王立ちになって電話でプロデューサーと押し問答したりもした。

発売後におおくぼさんの事務所にお詫びに行ったり、
他のカメラマンの方のクレジットが欠けていたためその方のお叱りを受けたりと、
入社以来一番プレッシャーを感じた仕事だった。

『COVERS』の宣伝を主に担当した先輩社員は、後に件のプロデューサーから
「お宅の会社ではなんであんな若い女の子にあんなにキツイ仕事をやらせるの?」
と言われたそうだ。
それを聞いて、「ああ、客観的に見ても結構キツイ仕事だったのか」と思った。

もっともTさんは、当時のキティレコードの大黒柱の「安全地帯」のアルバムが出るたびに
同じような苦労をしていたのだけど……
(キティグループで働いていたときのことは、また折があったら少し書くかもしれない)。

アルバム『COVERS』で、はっきりと耳に・真っ直ぐに胸に届く、
怒りと諧謔に満ちた清志郎さんの日本語詞と、凄みを増したヴォーカル、
ジョニー・サンダースや盟友・山口冨士夫等が参加したソリッドなサウンドを聴き、
初めて「RCサクセション≒忌野清志郎」の偉大さを痛感した
(そう思うまでにずいぶん時間がかかったものだ)。

そして、たとえ「タナボタ」と言われようと「インディーズ」と思われようと、
大手家電会社などと無縁の弱小レコード会社の社員でホントによかったと思った。

いまだにジャケットの内側のモノクロ写真を見ると、
「『ダブルトーン』(黒とグレーの版を重ねることで、黒1色よりも深みが出る)なのに
何でこんなにキタナイんだ……」と胸がチクチクするが。

紆余曲折を経て音楽業界から遠く離れ、中年になった今、
『ぼくの好きな先生』の純粋さ、『トランジスタ・ラジオ』の叙情、
『つ・き・あ・い・た・い』のアイロニー、『スローバラード』の哀切さ、
『FM東京』の毒、そして『Love me tender』の怒りをかみしめながら、
少しづつ忌野清志郎の世界をひもといている。

合掌。

by penelope33 | 2009-06-02 02:27 | 観る・聴く・読む | Comments(16)
Commented by sa55t at 2009-06-02 16:18
「ソリッドなサウンドを聴き」
ウーンpeneさんぐっと来たこの言葉。
良し、決めました。最近買った数本のgibson、SGを残すことにします。
その「ソリッド」が決め手だ。
Commented by penelope33 at 2009-06-02 19:59
Gibson SGって、AC/DCのアンガス・ヤングのギターなんですね〜。

私の世代から下は(たぶん)「ソリッド・ギター」の家元といえば
Gang of Fourのアンディ・ギルという人になるかと思うのですが、
彼の使っているギターは何なんだろう?
ネットで調べたけれどわかりませんでした。
どなたか知っている方がいらしたら教えてください……。
Commented by matico at 2009-06-02 21:37 x
ご無沙汰です…。
小学生の頃からのRC好き(兄貴達が古井戸&RCのファンだった影響で…^^)参上。
『COVERS』のポスター部屋に貼ってました。
度重なる引越で失くしてしまったのが残念です…。

私にとってのRCというと、
やはり翁長さん撮影の『I Feel Good』が印象的です。
Commented by penelope33 at 2009-06-03 00:12
maticoさん、おひさしぶりです。

昔からのファンの方がたくさんいらっしゃるので、
何をどう書いたらいいのかずっと考えていたのですが、
こうやってまたmaticoさんからコメントをいただけたので、
思い出話を書いた甲斐がありました。

『I Feel Good』って見たことないんですが、
表紙の清志郎さん、すっごく若いですね〜(顔がツルツルしてる……)。

ところでまたケガをされたそうで……どうぞお大事になさってくださいね。
Commented by とうさい at 2009-06-03 12:25 x
ゴブサタしております。
版下のくだりが何か妙にムネに迫ります(笑)。
EMIが版下持ってるって、引き上げられちゃった印刷屋さんはどうなったんだろうか…。
レコード掘り出して見てみたいです。
Commented by penelope33 at 2009-06-03 14:34
とうさいさん、てっきりアンディ・ギルのギターについて
コメントをいただいたのかと思いましたよ(笑)。

版下は歌詞の文字校前か、歌詞の写植がまだ貼っていない状態で、
EMIのデザイナーの方から渡されたんです。

デザインをしたのはロンドンの「Ikon」という事務所の方で、
英語で色指定した版下って初めて見ましたよ
(パントーンの色チップが貼られていました……)。

CDよりLPのほうがジャケットの迫力があっていいですね!
Commented by sa55t at 2009-06-04 10:32
調べました。
ギタリストが一つのギターだけというのは考えづらいのですが
彼がフェンダーのストラトキャスター(一般的にストラト)を弾いている写真はありました。
方や、GibsonのSGは「スクール オブ ロック」のジャックブラックが弾いていたた事でも有名。このDVDは子供たちの定番ロックDVDとなりました。
Commented by penelope33 at 2009-06-04 12:36
sa55tさん、わざわざすみません。
ありがとうございます。<(_ _)>

「スクール オブ ロック」、とっても楽しそうですね〜。
日本人で親子で観た人たちって多いのかしら……?
Commented by michelle at 2009-06-04 12:39 x
"School of Rock" Rocks! ですよ。名作。うちも親子で観ました。
Commented by penelope33 at 2009-06-04 22:01
う〜ん、字幕なしで親子で観られて楽しそう〜。
でも「元ネタ」は私でもだいたいわかるかな?
少なくとも『移民の歌』はわかるぞ(笑)。
Commented by 西家庵 at 2009-06-05 08:00 x
横槍を入れるようで申し訳ございませんが、
私にとってSGと云えば、70年代のFrank Zappaです。
彼の演奏が好きでした。ブルーズナンバーには何度シビレたことか…
早いもので、鬼籍に入られてから15年も経つのですね。

私も、以前School of Rockを拝見しました。
この映画中の曲Smoke on the Waterは、Frank Zappaのスイス公演で発生した
火災事件をDeep Purpleが目撃し、そこから発想を得て作ったのは有名な話ですね。
Commented by penelope33 at 2009-06-05 12:20
西家庵さん、こんにちは。

Frank Zappaは何を聴いたらいいのかわからなくて、
まだ聴いたことがないのです(Captain Beefheartも長年の宿題で……)。
初心者は『Hot Rats』あたりからがいいんでしょうか……。

『Smoke on the Water』のエピソードは知りませんでした。
バンドの機材全部が燃えちゃったなんて……。

ところでこのページ、おもしろいですね。
http://homepage.mac.com/club_k2/zappa/osusume.html

Commented by 西家庵 at 2009-06-05 15:20 x
ご案内戴きましたHP拝見しました。
Zappaファンの皆様が、こちらの方の様に非常に熱心であられることが多いのは、
いかに彼の音楽が魅力的(常習的?)である証左であると思います。

確かに、Zappaの場合(Captain Beefheartも)どこから入っていいのか悩みますよね。
しかし、ご指摘の"Hot Rats"は人気もあり、とっつき易くもあるので、
最初のZappaとしては好適であると思います。"貞子"なスリーブもナイスですね^^

個人的には、"Chunga's Revenge"や"Over-Nite Sensation"も好きですし、
双方ともロック好きの方には満足戴けると思います。
特に、"Chunga's…"の内スリーブは必見です!
Commented by penelope33 at 2009-06-05 19:09
"貞子"なスリーブ!確かに……(笑)。
これでZappaさんは私の中で
「気になる巨匠」から「聴くべき天才」になりましたよ。 ^^
Commented by muu at 2009-06-06 20:09 x
『COVERS』に携わってたんですか!友達に借りてカセットで愛聴してました。
なんか不思議です。
Commented by penelope33 at 2009-06-06 20:46
まあ、携わったといっても「タナボタ」の「下っ端」でしたから(笑)。
名前
URL
削除用パスワード


<< イギリス製のアルミのコンテナ      「Yutori-tei UK=... >>