青蓮亭日記

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2023年 01月 08日

寒中お見舞い申し上げます

寒中お見舞い申し上げます
(父とヤマコ、ダブル喪中なので……)。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。


**************


昨年、姉が川越の実家を整理する際、
まず古物業者さんに入ってもらい、着物などを見ていただいたようなのだけど、
ほとんどに虫食いがあり、買い取ってもらえなかったそうだ。

このこけしたちも、「名工」と言われる人の作品はないらしく、
「買取価格は@100円」とか言われたらしい。


でも、父から兄や私宛に「メッセージを書き込んでるのがあるよ」と聞いて、
便利屋さんに片づけてもらう前に “救って” きた。

一応、写真で残しておこうと思って
(寝起きにiPhoneで、老眼鏡もかけずにパパパッと撮った、ブツ撮り……)。

一番左のが、私宛、その隣りの黒いのが、兄宛だった。

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鎌倉の、沼田元氣さんのこけし専門店『コケーシカ』のサイトを覗いてみたら、
この手の “ヴィンテージこけし” が「福袋」でまとめて1万円で売られていた。

こういう煤けて手垢のついたこけし、もう日本人は興味がないのかしらね……。


ロンドンの古物マーケットで、日本のこけしが売られていて、結構人気だと、
長年彼の地に住み、帰国された、ご同業の方から教えていただいた。

こけしって、オリエンタルな異国情緒があってカワイイし、場所も取らないし……わかるような気がする
(イームズ夫妻の家にも飾ってあった)。


海外に買い付けに行く業者さん、ちょっと重いけど、
まとめてあちらの業者さんへのお土産としてどうでしょう……?


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これは、一応、商品として仕入れたもの。
「南部系」、花巻 煤孫実太郎
(『Kokeshi wiki』、素晴らしい!! )

ウチの本棚に飾っているけど……。


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左から、「蔵王高湯系」添川 一(63才)作、
「鳴子系」森谷和男 作、
「鳴子系」森谷和男 作、
「蔵王高湯系」(田中)敦夫 作、
「鳴子系」大沼秀雄 作、
「弥次郎系」(鎌田)文市(68才) 作
「土湯系」二代目 (佐久間)虎吉 作。


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『りぼん』を熟読するワタクシの頭部の
右上方に飾ってあるのが、これらのこけし。

ここでウチの家族の変遷を静かに見守っていたんだよな……。



「モノを並べるのが好きな子ども」だったので、
昔、この「こけし軍団」も、バランスを考えながらあれこれ並び替えていたのに、
当時は父の書いた文字には全っ然気がつかなかった。

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子ども心に「黒いの、かっこいいなぁ〜」と思っていた
(ちっちゃい頃から渋好み)。

それが、兄を想って購入したものだったとは……
(お父さん、結構達筆だったんだね……)。


名利につかれて 静かなるいとまもなく
一生を苦しむことこそ おろかなれ

鳴子にて
(昭和)53.7.4

がんばれ(兄の名前)君



貧しい家の出で、功利主義のカタマリみたいだと思っていた父だけど、結構内省してたんだね……。
7月というと、温泉に行くお客さんを連れて行ったときかな。

思い返すと、昭和50年頃の父は、
夜寝ているときによく胸が苦しくなると言い、病院の循環器科を受診すれば、
「心臓はなんでもない。『心臓神経症』。アタマの問題」と言われていた
(『心臓神経症』は、今では、心臓の微小血管に問題がある病気だとされている)。

その後、健康雑誌で、『自律神経失調症』などに効くという
『ナガミネ・ワクチン』なるものを探し出してきた。

昭和51年(1977年)9月、13歳の私も、夏休みの体操部の練習で体調不良になり、
両親と兄と一緒にナガミネさんのクリニックに行き、
しばらくこのワクチンを自分の腿に皮下注射していたのだった。

私には、注射針がなかなか刺さらなくて痛かった嫌な思い出しかないし、効きゃあしなかったが、
父は「良くなった」と言っていた(プラシーボ効果……?)。


昭和52年7月当時の父は、心身ともに割合良い状態だったんじゃないかと。

でも、結局、父は、近所の精神科クリニックで「精神安定剤(=抗不安薬だろう)」を、
長年もらって服用していたし、自律神経系の不調やメンタルの過敏さは、一生ついてまわった。


兄は父の葬儀のとき、お骨を拾わなかった。

「何?そのオレ様ルールは……」と呆れたが
(思い当たる要因はいくつかあるけれど、「そういう流儀なんだろう」と思い、本人には聞いていない)、
その後、ヤマコの薬をもらいに漢方薬局にいたとき、突然、兄から携帯に電話があったので、
まあ疎遠ではあるけれど、なんとなく繋がっている。

兄に「黒こけし」の写真を送って、「どう?」と尋ねたけれど、
「なんだかなぁ……。計算すると高校生のときなんだけど(兄は昭和37年生まれ)、
 今となっては同じことをウチの息子どもに託すしかないなぁ……」
と言っていたので、
「じゃあ、(父がスキーをするときにつけていた)白黒の雪柄の耳当ては?」と尋ねると、
「毎日ジョギングして、冬は帽子だと暑いから、いるかも」と言うので、そちらを送った。

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がんばれ 優子ちゃん
光の中を 健やかに 歩め


鳴子にて (昭和)53.7.4


……泣ける。

お父さんの血筋を継いでビョーキになっちゃったよ。
でも、ダークサイドには落ちてないから、大丈夫だよ。


なんだか、このふたつのメッセージをそっくりそのまま父に返してやりたい気がする。

こんな理想を託しても、親がネガティヴだったら、子どもは天真爛漫な人間にはならないよね。


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絵柄のあるものの中で一番好きなのは、「鎌田文市」さんのかな……?

右の「煤孫実太郎」さんのは、
他のものと比べると、やはり木地の美しさにこだわっているのがわかる。



個別でも、まとめてでも、もし「ほしい」という方がいらっしゃったら、
鍵コメントかメールでお気軽にお問い合わせください。

どなたからもお声がかからなかったら、
ウチでまた、自分を見守ってもらいます。




【追記 (2023.1.10)】

他のSNSで皆様にたくさんお褒めのお言葉をいただいた「筆跡」ですが、
今日、姉と電話で話しましたところ、
「書いてもらったんだよ〜。お父さん、カクカクした字書いてたじゃない!」と。
確かに……💦。

「ぬか喜び」ならぬ、「ぬか感動」させてしまい、まことに恐縮です(^^;)。





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by penelope33 | 2023-01-08 19:35 | 古いもの・古びたもの | Comments(0)
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