青蓮亭日記

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2008年 01月 07日

漆喰とステンレス('08年1月)

'99年の夏、今住んでいる借家を内見したとき、
以前住んでいた古いアパートと同じように、 内壁が漆喰だったのがとてもうれしかった。
当然そのままにしておいてもらえると思っていたのだけど、
いざ入居してみたら、キッチン以外のあらゆる壁に壁紙が貼られていて、
(決して大袈裟ではなく)ショックで打ちのめされてしまった。

漆喰とステンレス(\'08年1月)_f0151592_1802589.jpg




もちろん大家さんは御好意でリフォームしてくださったわけで……。
でも、漆喰の素朴で優しい白色、光を柔らかく受容する質感、
湿度を自然に調節する機能、多少の汚れを味わいに変えてくれる懐の大きさなどなど、
失ったものを考えると、
「あのとき大家さんに直接お会いして希望を伝えられたら……」と悔やまれる
(まあ、借家だからしょうがないんですけどね)。

その一方で、キッチンのシンクや調理台、ガスコンロのまわりから出窓部分までが
ピカピカのステンレスだったのがうれしかった。
ステンレスやアルミ、琺瑯、ガラスなど、業務用っぽい感じのするものが好きだ。

このキッチン……というか、“昭和の台所” にいるとなんだかとても落ち着く。
古民家とまではいかないが、
柱や桟の黒ずんだ木の質感と漆喰の暖かみのある白になごまされる。
それと、好きな色や形のものたちが並んでいるせいだろうか。

左側の小さな黄色のミニチュア棚はちょっと子どもっぽいかなという気もするが、
備え付けの引き出しがひとつしかないので、
細々としたものを入れるのに今のところ欠かせない。

ウチは食器棚が極小なので、
中央の2段式のステンレスの水切りカゴに、普段使う食器は入れっぱなし。
ホントはもっとスッキリさせたい。

露出をかなり上げて撮っているので明るく見えるが、
実際は北側にある昔ながらの台所なので、蛍光灯をつけないと暗い。

環境は天と地ほどの差があるけれど、
豪奢な洋館に住む写真家の今 道子が、
いつも北側の窓の光で静物を撮っていると言っていたのを思い出す
(NHKの『近未来写真術』という番組で観た)。

漆喰とステンレス(\'08年1月)_f0151592_18164464.jpg

上の画像は、'07年夏。
夕方に撮ったので、隣りのお風呂場から西日が差し込んでいる。

この写真を撮る少し前に、
クウネルVol.25('07年5月1日号)「料理上手の台所」に掲載されていた、
すみずみまで掃除の行き届いた使いやすそうな台所の数々に感銘を受ける。
普段は立ち読みか近所の中華料理屋で読んですませるクウネルだが、
これは即買って何度も何度もながめている。

雑誌ながらこの号は版を重ね、
追補・再編集された単行本・『ずらり 料理上手の台所』は、
昨年11月上旬の段階で4刷・7万部売れたそうだ。

その中でも、リンナイ+クロワッサンのガスコンロを始め、
使用している道具、全体の雰囲気や構造がウチの台所と似ている、
渡辺有子さんの台所のページに目が釘づけになる
(渡辺さんの本は読んだことはないのだけど……)。
まめな掃除と、掃除のしやすい台所を志す。
同じように思った人は少なくとも全国で7万人いるはず。

でも、たぶん私は料理より料理の道具が好きなんだと思う。

漆喰とステンレス(\'08年1月)_f0151592_1818436.jpg

上の画像は、'06年12月。
フィスラーの寸胴鍋の中身は「おでん奉行」謹製のおでん。

漆喰とステンレス(\'08年1月)_f0151592_18194067.jpg

上の画像はサービス版絹目プリントから起こしたのでちょっと見づらい。
たぶん'99年か'00年頃。
まあ、この頃から比べれば多少今はすっきりしたような(気のせい?)。

昔の台所と今の台所を比べると、少しづつ鍋が入れ替わっているのがわかる。
ZOOからは「鍋フェチ」と言われる。


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2010年8月、この借家で撮った最後の台所の写真はこちら

by penelope33 | 2008-01-07 17:02 | つれづれ | Comments(8)
Commented by Awavi。 at 2008-01-07 21:10 x
これは素敵な定点観測!!
見ていてとても楽しいですねー。(もっと高解像度で見てみたい)
ぜひ、このシリーズ続けてください。
ペネさんは、お盆フェチかと思っていたら、鍋フェチでもあるんですか?
僕は〜バットマンです・・。
Commented by penelope33 at 2008-01-07 21:43
元の写真のサイズはもっと大きいんですけど……。
明日も「定点観測」ネタです。

お盆は、たくさん売り買いするくせに、
自分が普段使っているのは安物のアルマイト製っていう……。
明日の日記の画像にちょっとだけ写ってます。

母がそのへんのスーパーで買ったお鍋を使って
毎日手の込んだご飯をつくっていたのと比べると、
手首が腱鞘炎になりそうな程重くて値段の張るフィスラーの
艶消しステンレス三層鍋で手抜き料理しかしない自分って……と思うんですよ。
Commented by N.Kojima at 2008-01-07 21:55 x
うちの台所も、こんなかんじですね〜。
Commented by penelope33 at 2008-01-07 22:41
あ、そうでしたか〜!
昭和30〜40年代のカオリですね。^^
Commented by sa55t at 2008-01-08 00:34
うちは漆喰なんですよ。
世間で色々言われておりますが、壁に何も掛けられなく苦労します。
私は写真をいっぱい掛けたいのに。

で、今回の台所!もう最高!シノゴって言いたいところですが最近のデジタルは性能が良いのできちっと撮れますね。
これ続けて見せて下さい。
しかし綺麗に片づいているなぁ。うちの惨状写真でも撮るかな、コンセプシャルで良いかも。
Commented by penelope33 at 2008-01-08 01:34
確かに〜。桟から吊るすしかないですねぇ。
“台所クロニクル”、何か変化があったらまた撮ります。

ヴォルフガング・ティルマンスの写真で、
食べ散らかした食卓だったか散らかったキッチンだったか、
色とりどりでウツクシイのがありました。
sa55tさんのお宅もぜひ。
Commented by たけちゃん at 2023-06-01 17:12 x
こんにちは。
「どうだ!おしゃれでしょ」という主張のキッチンは落ち着きませんが
考えぬかれ熟成した台所って代えがたいものがありますね。

Commented by penelope33 at 2023-06-08 17:33
> たけちゃんさん

こんにちは。

熟成したのかどうか、よくわかりませんが💦、今は徐々に廃れつつありまして……。

とはいえ、レトルトのお粥も、好きな器で食べると侘しい気持ちになりません♪
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