惜しくも2001年に急逝した岩立通子(いわたてみちこ)。
この本は、彼女のアシスタントであった5人のスタイリストが、
“岩立通子が愛用した品々” をスタイリングした写真集(初版・限定3,000部)。
タイトルは、彼女がユーカリの枝を好んでスタイリングに使ったことからつけられた。



「白いうつわ」「カトラリー」「お茶」「小さなもの」「ステーショナリー」
「かご」「旅」「トルソ」と、岩立さんが好きだったもので章立てされ、
柔らかな雰囲気の写真に、生前の彼女の言葉が添えられている。

今ではもう当たり前になった、装飾の少ないシンプルでナチュラルなスタイル、
業務用の品を普段の生活に取り入れること、
フレンチからアジアンまで世界中のテイストを楽しむこと、
古いものを慈しむこと。
その普遍的でブレのないスタイリングは、今もなお、
後進のプロやインテリアに興味を持つ多くの人々に大きな影響を与えているという。

【掲載されている品々】
ベニングトンポッターズ社のピッチャー/ケメックス社のコーヒーメーカー/
バーバラ・アイガンのマグカップとプレート/古谷信男の粉引碗/ツェツェのボウル/
中国・タイ・ベトナムのカトラリー/益子焼の土瓶/リモージュ焼のカップ&ソーサー/
実験用の白磁のるつぼ/アフリカのかご/グローブトロッターのトランク/
ロシア・SLAVA社の目覚し時計/崎陽軒のひょうちゃん(しょうゆ入れ)/
李朝の徳利と小皿/月光荘画材店の文房具 等々……。

an・anなどのインテリア特集で見る岩立さんのスタイリングは、
20代の私にはちょっと優等生的で物足りない感じがして、
むしろ、一般の人たちのリアルなインテリアを見るのが異様なくらい好きだった
(雑誌のインテリア特集から切り取ったページを、夜寝る前に繰り返しながめたりして……)。
その延長線上に、都築響一の『TOKYO STYLE』があった。

けれども、彼女が仕事を始めた頃の女性誌のインテリアというのは、
花柄とか原色とかレースとか、ちょっと今では想像できないくらい “ファンシー” なもので、
そんな中で岩立さんのスタイリングというのはまさに革命的だったという。
おそらく「プレ岩立」と「ポスト岩立」の世界の差は、私の想像以上に大きいのだと思う。

そして私自身が「もの」を真剣に見て選ぶ暮らしをするようになり、
彼女の「もの」を見る眼の確かさを改めて実感するようになった。

この本も、最初見たときはなんとなく物足りなさを感じたのだけど、
今では、ここに載っている、いかにもスタイリッシュというのとは違った美しいもの、
スタンダードなもの、温かみのあるもの、かわいいもの、ちょっとマヌケなものたちが、
とてもいとおしく感じられる。

この本は決して “インテリアの教科書” などではなく、
あるスタイリストが一緒に暮らしたいと思った気のおけない “仲間たち” が、
主亡き後に初めて生き生きとした顔を見せた、そんなプライベートな写真集だと思う。


