青蓮亭日記

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2008年 08月 23日

『マスターズ オブ ライト 〜アメリカン・シネマの撮影監督たち〜』(1988年/フィルムアート社 刊)

品薄だしあまりネタも思いつかないので、
前回の記事の「マジックアワー」からの連想で、私の大好きな本を御紹介。

人は、俳優が好き、(アクションものとか韓流とかミュージカルといった)ジャンルが好き、
オシャレな映画が好き、監督が好き、単館系が好き、ヒット作だからと、
さまざまな理由で映画を観る。
そして、ストーリーや俳優の演技、監督の演出を始め、
歴史的、社会学的、映画話法的、映画史的、文学的、美術史的、表象文化論的、
ジェンダー論的……と、さまざまな観点から語る。

でも、この本を読むと、映画というのは何よりもまず、
「光源と光量を始め、さまざまな状況のもとでいかにフィルムに画像を定着させるか」
という「化学」と「技術」なんだなぁと思い知らされる。
「監督は好きじゃないけど、この人が撮っているから」という理由で映画が観たくなる。

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原著は、現代アメリカ映画を代表するキャメラマンたちの
インタヴュー集『Masters of Light』。

トップバッターのネストール・アルメンドロスはキューバ出身。
キャリアの初期にドキュメンタリー撮影の経験を積み、
ヌーヴェル・ヴァーグ全盛期に渡仏。
フランスのエリック・ロメールやフランソワ・トリュフォー
といった監督の盟友として多くの作品を手がけ、
アメリカのテレンス・マリック監督の『天国の日々』
米アカデミー撮影賞を受賞。
この作品で「マジックアワー」における撮影が多用されている
ことは広く知られている。

インタヴューでは当然そのことについても触れているのだけど、
それだけでなく、「キャンプファイヤーのシーンでは、
バーナーのついたプロパンガスのボンベを使って焚火の明かりの効果を出したが、
(職能の細分化されたアメリカの映画撮影スタッフは)『そんなこと誰がやるんだ』とみな嫌がった」
というようなリアルなエピソードがこたえられない(マニアックですかね……?)。

撮影監督とは、照明なども含めた大勢の技術者を統率する指導者であり
(日本の映画製作のシステムではキャメラマンにそこまでの権限はなく、
照明は照明技師の管轄)、
監督が思い描いている作品全体を貫く画調(これを「ルック=LOOK」と呼ぶ)、
例えば「ドイツ表現主義映画みたいな感じでいこう」とか、
ピエロ・デラ・フランチェスカの絵みたいにしたいんだ」とか、
そういった要求に答えられる一流の職人にしてアーティストだということがわかる。

この他、ジョン・アロンゾ(『バニシング・ポイント』『チャイナタウン』)、
ジョン・ベイリー(『キャット・ピープル』『シルバラード』)、
マイケル・チャップマン(『タクシー・ドライバー』『レイジング・ブル』)、
ウィリアム・フレイカー(『ローズマリーの赤ちゃん』『ブリット』)、
ラズロ・コヴァックス(『イージー・ライダー』『ゴーストバスターズ』)、
オーウェン・ロイズマン(『フレンチ・コネクション』『エクソシスト』)、
ヴィットリオ・ストラーロ(『地獄の黙示録』『ラスト・エンペラー』)、
ハスケル・ウィクスラー(『夜の大捜査線』『カッコーの巣の上で』)、
ゴードン・ウィリス(『ゴッドファーザー Part I、II』『アニー・ホール』),
ヴィルモス・スィグモント(=ジグモンド)(『ディア・ハンター』『ローズ』)……といった、
11名のキャメラマンのインタヴューが収められている。

80年代半ばに出版された本だから、扱われている作品も少し古めだけれど、
今はDVDでだいたい観られるし。
映画や写真(撮影)に興味のある方には、とてもおもしろく読める本だと思う。

多くの映画監督たちは、これから撮る作品の「ルック」を決めるため、
撮影監督と一緒に過去の名作を何本も観たり、クラシカルな画家の作品集を研究しあう。
日本だと、せいぜい参考になるDVDや写真集のやりとりをするくらい?
こういう(時間とお金と文化の)豊かさってないよなぁ……。

by penelope33 | 2008-08-23 23:26 | 観る・聴く・読む | Comments(0)
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